太陽光発電の固定価格買取制度が将来も廃止できない理由

 再生エネルギーは設置・運用コストの低減に伴って、買取価格が引き続き引き下げられる事が期待できる。が、いずれ単純に下げるわけにはいかない別の問題が発生する。

 

 2014年現在、太陽光10kW未満の買取価格は37円。一般家庭が設置した場合はこれになる。

 モデルケースの家庭として、日中の太陽光発電量と消費量が一致する場合を考えてみる。

 東京電力の場合、従量電灯の電力単価は以下の通り。

 

電力量料金 第1段階料金 最初の120kWhまで 19円43銭
第2段階料金 120kWhをこえ300kWhまで 25円91銭
第3段階料金 上記超過 29円93銭

 

 家庭から見た場合、発電した電気を単価37円で売却し、その間の消費分を約26円ないし30円で購入している事になる。収支を考えれば自分で使うよりも売却した方が得だという算段が働く。家庭用の収支は3段目料金と2段目料金の中間、約28円で計算すれば

 

 売却37円 - 購入28円 = おトク9円

 

一方、電力会社から見た場合はこうなる。

 販売28円 - 回避可能費用11円 = 粗利17円

 

 買取37円と回避可能費用11円の差額26円は、その他の契約者に広く薄く負担してもらっている。

 

さて、買取制度が終了した場合、どうなるだろうか。

太陽光パネルを設置した家庭は日中は自家消費し、夜間だけ電力会社からの購入が必要になると想定する。すると、

 

家庭   日中購入額 ゼロ

電力会社 日中販売額 ゼロ

 

となる。電力会社は今まで得られていた利益がなくなるのである。さらに、夜間は単価が安くなるプラン(12円48銭)に変更された場合、トータルでは赤字契約になりかねない。

 買取制度が終了せずとも、日中単価と買取単価が逆転した場合も同様になる。安く売って高く買うという選択はしないのだから。

 固定価格買取制度は継続した方がいい。また買取単価は下げて欲しくない。この点で、太陽光を設置した家庭と電力会社はwinwinの関係にあるのがおわかりいただけただろうか。わかりやすく家庭用で示したが、実はメガソーラーも電力小売り自由化後は同じような関係が発生する。その点はいずれ後述したい。

 

 今の時点では、買取制度をやめて自家消費だけになっても、電力会社の収支上は微々たるものだ。だが、現在の買取期間が終了し始める10年後の普及数は、それなりのインパクトを持っているはずである。電力会社にとって買取期間終了後は、自社の発電所を手放しそれがライバルのPPS事業者に切り替わるのと同じ意味になるのだ。

 

 そうなったら電力各社は買取期間の延長に政策を促すのではないか、と私は予想している。